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第25回ヘルスプロモーション研究センター

保険・医療・介護のヘルスプロモーションをめざして

高齢化社会が急速に進行しています。地域住民の健康を守り、元気に生活できる社会をつくるためには、地域が抱えるさまざまな課題に対して、行政だけでなく、住民組織をはじめ、保健医療福祉に関わる関係機関が協働することの重要性が指摘されています。そのためには、多機関・多職種が目標を共有して共に働き、地域の限られた資源を有効に活用して、その実現を図ることが必要です。

 ヘルスプロモーション研究センターは、地域医療振興協会・地域医療研究所の研究機関として、ヘルスプロモーションの推進に関する実践的研究に取組んでいます。ヘルスプロモーションは、健康な人を対象とするだけでなく、病気や障害を抱えた人が自分らしく充実した生活を送れることを支援することを目指す取り組みです。当研究センターでは、医療施設での患者さんや職員を対象にした活動と地域住民を対象とした活動が一体とした取り組みになるよう、地域の関係機関と協働を大切にしながら活動を行っています。

病院を健康にする

台東区立台東病院・老人保健施設千束


WHOは病院からヘルスプロモーション活動を展開する取り組みとして、HPH(Health Promoting Hospitals and Health services)を提唱しています。当研究センターはこの趣旨に賛同し、台東病院・老健千束と協働して、2016年より具体的な取り組みのための体制や具体的な活動について検討してきました。その結果、2018年度から今後10年間の指定管理更新に向けて、3つの運営方針の1つに地域ヘルスプロモーション病院としての役割が位置づけられることになりました。活動の主なテーマは在宅ケア、認知症ケア、フレイル予防、禁煙推進です。
 
禁煙推進については、すでに2016年度から先行実施し、これまで患者や職員の喫煙の実態や禁煙支援のニーズ調査等を行い、2017年度はJADECOMけんぽとの共同保健事業として、最新の禁煙治療のエビデンスに基づき、わが国初の充実した治療コースもメニューに取り入れて、禁煙を希望する職員を対象に禁煙治療を行いました。

台東区立台東病院・老人保健施設千束におけるヘルスプロモーション活動
台東区立台東病院 看護師:山口幸代さん・高山結花さん


今回の職員向け禁煙外来を担当し、治療中のカウンセリングも行いました。禁煙以外にも職場でのストレスを多く抱えていらっしゃる方もあり、個人情報の保護には十分に配慮しました。予約や診察時間の管理に苦労しましたが、参加者の9割が禁煙に成功し、喫煙している時はできなかった勉強に取り組むなど、前向きに次のステップに進まれている姿を見ると、応援したい気持ちになりました。

 今後は、整形外科で手術を受ける患者様への禁煙指導を行う予定です。入院前から禁煙外来を受けられるようスケジュールを組み、外来に通えない方にも禁煙へ導いていけるよう看護師として関わりたいと考えています。

職員の禁煙支援の成果は学会発表しました

職員の禁煙支援の成果は学会発表しました

地域を健康にする

神奈川県真鶴町


2016年度に、真鶴町から「真鶴町地域福祉計画・地域福祉活動計画」の策定を受託しました。本計画では、真鶴町のほか、真鶴町社会福祉協議会、真鶴町国保診療所が三位一体となって、保健、医療、介護、生活支援に関わるサービスを効果的かつ効率的に提供するシステム構築を目標に掲げ、重点目標や活動の方向性を定めました。
2017年度は、同計画の重点目標のひとつである、がん・循環器疾患予防対策を実践にむけて、真鶴町、女子栄養大学との共同研究事業として町民の食事調査を実施したほか、国保診療所と協力して住民向けの高血圧予防教室を実施しました。今後も町や診療所等の関係機関と連携・協働して、町の健康課題の改善に取り組みます。

真鶴町国民健康保険診療所 作業療法士:河野圭介さん


降能力を維持することが在宅生活を営む上で必須となります。診療所では、医療や介護が必要な当事者だけではく、ご家族などからも寄せられる痛みや動きにくさの相談に応じるために、個別または集団のリハビリテーションやトレーニングに取組んでいます。また、子供の運動時間が少ないというデータや、実際に教育委員会など関係者にヒアリングをした結果をふまえて、小学生以上を対象に、姿勢の矯正、運動能力の向上を目的にしたトレーニングも始めました。地域診断に基づき、地域の特徴や課題をふまえて検討したことで、それぞれのターゲットに必要なアプローチが自信をもってできていると感じています。今後は、若者にも身近で気軽に頼れる町の「かかりつけ医」となるよう、これらの活動を発展いけたらと思います。

ダイエットや身体づくりを目的としたナイトトレーニングを定期的に開催

ダイエットや身体づくりを目的としたナイトトレーニングを定期的に開催しています

群馬県嬬恋村

 
当研究センターは、2015年より群馬県嬬恋村と協働しフレイル予防に取り組んでいます。2016年に高齢者健康調査を実施し、その結果をふまえ、教室のプログラムを作成し、担い手となる住民ボランティアの養成をしました。現在「住民主体のフレイル予防教室」を村内行政区ごとに展開しています。今後は国保診療所とも協働して、高齢者が元気で安心して暮らせる村づくりに取り組みたいと思います。

嬬恋村 住民ボランティア
(フレイル予防サポーター):
髙丸 和己さん


ーフレイル予防サポーターになろうと思ったきっかけは?

まずは自分の健康のため、というのが第一ですが、何らかの形で村に貢献したいという気持ちもありました。別荘地区に移住してこられる方の支援をする中で、高齢期の健康管理がいかに大切かを知り、「これは勉強になる!」と思って応募しました。

ーフレイル予防サポーターになってみてどうですか?

とても勉強になります。何より、地域でのご近所同士の繋がりがフレイルの予防になるということが、とても勉強になりました。サポーターになるために勉強したことが、移住支援をする際のコミュニケーションツールになっています。

ー今後はどんな活動をしていきたいですか?

男性が気軽の集まれる場所を作りたいですね。特に男性はそういう「近所づきあい」みたいなことが苦手ですから。あとは、他の地区で同じような活動をしている人たちと意見交換をしたいです。「へえ、あっちの村ではそんなことをしているんだ!」とか。そうやってこのフレイル予防の輪がどんどん広がっていくといいと思います。

嬬恋村 住民ボランティア (フレイル予防サポーター):髙丸 和己

合言葉は Look Think Act 〜みんなの健康はみんなで守る〜

ヘルスプロモーション研究センター
センター長 中村 正和

 

私たちは、「Look Think Act みんなの健康をみんなで守る」を合言葉に、医療や地域の場でのヘルスプロモーション活動を行っています。活動の手順としてPDCA(計画、実行、評価、改善)が広く用いられていますが、多機関・多職種が協働するためには、これらのステップをみんなで一緒に進めることが大切です。PDCAの最初のステップは計画(Plan)ですが、いきなり計画をするのではなく、その前に地域のデータを分析したり、住民や関係者の思いを聞いて、地域が抱える課題やみんなが望む未来像について意見交換をしたり、相互理解を深めるプロセスが必要です。そのプロセスをわかりやすく伝えるために、PDCA ではなく、Look Think Actを用い、そのプロセスを「みんなで」一緒に進めることを合言葉にしました。みんなで地域の健康課題をながめて(Look)、みんなでどう解決するのかを考え(Think)、みんなで力を合わせて取り組む(Act)のが、まさにヘルスプロモーションであり、私たちの活動の合言葉です。

ヘルスプロモーション研究センター


2018年3月からヘルスプロモーション研究センターのホームページがリニューアルしました。活動の詳細についてはホームページをご覧下さい。

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バックナンバー

  1. 第32回 第17回 へき地・地域医療学会を開催
  2. 第31回 第16回 へき地・地域医療学会を開催
  3. 第30回 第15回 へき地・地域医療学会を開催
  4. 第29回 第14回 へき地・地域医療学会を開催
  5. 第28回 台東区立台東病院・老人保健施設千束のヘルシーローソンプロジェクト