Oregon Health & Science University (オレゴン健康科学大学)(以下、「OHSU」とする)は、アメリカ西海岸オレゴン州最大の都市ポートランドに所在する医学校であり、オレゴン州の地域医療において重要な役割を担っています。医学教育に力を入れており、同校の家庭医療研修プログラムは、全米でもトップクラスのプログラムとして評価されています。
同校と当協会は、相互訪問や医師・医学生の研修派遣を通じ、15年以上に渡り交流を続けて参りました。この度、会員サービス向上のため、当協会会員を主な対象にOHSU及び関連診療所等の視察を中心としたツアー型グループ研修を企画・実施しました。
OHSU地域医療視察研修 研修記
研修期間:平成29年9月23日(土)~30日(土)
参加者:医師9人(当協会の会員及び職員)
Day1:成田→ポートランド
Arrive at Portland (Welcome Lunch
ポートランド空港に到着後、今回担当されるOHSUスタッフとの顔合わせを兼ねて、ランチを取り、その後は自由行動。(早々にポートランド市街を流れるウィラメット川沿いでジョギングを楽しむ元気な参加者も!)
OHSUスタッフと一緒に
Day2:ポートランド近郊
Sightseeing
この日は終日ポートランド近郊の観光を行いました。
Mt. Hoodはオレゴンのシンボルともいえる山で、標高は富士山よりも少し低い3,429メートルです。山頂から中腹にかけては1年中雪に覆われており、夏でもウィンタースポーツが楽しめる人気の観光地となっています。また、オレゴン州はビールとワインの名産地としても有名で、ビール醸造所・ワイナリーを訪問し、昼食と試飲を楽しみました。
Mt. Hood
Day3:ポートランド
01. Orientation
OHSUのメインキャンパスを訪問。OHSU Family Medicine(以下、「OHSU FM」とする)の拠点であるEmma Jones Hallにてオリエンテーションを受けました。
OHSUのメインキャンパスはMarquam Hillと呼ばれる丘の上に建てられており、約15,000人の職員を有する医師・歯科医師・看護師を養成する医学校で、附属病院は522のベッドを抱えています。今回研修先であるOHSU FMは職員513人(うち、指導医は147人)により運営されており、附属病院での診療ほか、オレゴン州各地に13の診療所を運営し、地域の医療を支えています。OHSU FM所属の研修医はそれら診療所等をローテートすることで、幅広い診療技術を身に付けています。特に医学教育に力を注いでおり、OHSU FMはそのレジデント研修プログラムにおいて全米でもトップクラスの評価を得ています。
02.Campus Tour & South Waterfront Clinic
OHSUのキャンパス見学とFMのSouth Waterfront Clinicに訪問。Clinicの所長である日本人医師 山下大輔先生に話を伺いました。
キャンパス内を巡る参加者一行
South Waterfront Clinic 所長:山下 大輔先生
03. Lecture: "U.S. Medical Insurance System" Talk and Discussion: "Community Medicine"
OHSU FMスタッフによる、米国の保険医療制度に関する講義を受けました。患者により保障を受けられる検査や治療の範囲が異なるため、医療機関における医療費の取り扱いは複雑になっているとのことです。 続いて、OHSU FM所属の医師・研修医を招き、ディスカッションを行いました。OHSUスタッフ・研修参加者がお互いの仕事内容を紹介し、それぞれが抱える課題や疑問について語り合う良い機会となりました。
Dr.Steve Wahls, Dr.Anthony Cheng, Dr.Wes Bakerとのグループディスカッション
Day4:ポートランド→ウォームスプリング→クラマスフォールズ
Visit: Warm Springs Health & Wellness
この日は、ポートランドを発ち、オレゴン州最南部のクラマス郡を目指します。OHSU FMのAssociate ProfessorであるDr.Meg Hayesにも同行いただきました。
ポートランドから南東へ100マイル(約160km)ほど進むと、景色は一変し一面の荒野が広がります。アメリカ合衆国各地には、ネイティブアメリカンのコミュニティが点在しており、この日我々が訪れた街Warm Springs Reservationもその一つです。
コミュニティの医療を支えるWarm Springs Health & Wellnessの見学を行いました。OHSU FM運営の診療所ではありませんが、OHSU FMの医師が診療に携わっています。ネイティブアメリカンは独立した自治組織を持っており、医療保険システムも異なります。米国政府の保護により、このコミュニティの方々の診療費は無料となっているとのことでした。
Day5:クラマスフォールズ→クレーダーレイク→ポートランド
01. Visit: Sky Lakes Medical Center & Cascades East Clinic
Sky Lakes Medical Centerは、OHSU FMとパートナーシップを持つ民間病院であり、ポートランドから南へ300マイル(約480km)離れた山々が広がるクラマスフォールズの街に位置しています。
Sky Lakes Medical Center
Cascades East Clinicは、OHSU FMが運営する診療所です。Sky Lakes Medical Centerと同じ敷地にあり、救急以外の外来診療を担っています。建物はコンパクトながらも、多くの職員が勤務しています。医師1人につき400人程度、この地域のかかりつけ患者様を受け持っているそうです。 診療所のレジデント研修プログラム責任者であるDr. Joyce Hollander-Rodriguezから、Cascades East Clinicのレジデント研修プログラムについて説明を受けました。同Clinicの家庭医療研修プログラムは全米でも屈指の人気を誇り、常に全米トップ5に入っています(2016年は第2位)。8人の研修医受入枠に対し、毎年1,200人程度の応募があり、150人程度を面接して選考しているそうです。
Cascades East Clinic
診療所内の指導医オフィス
02. Sightseeing(Crater Lake)
クラマスフォールズからポートランドへ戻る道中、Crater Lakeを観光しました。火山の噴火により発生したカルデラ湖であり、周辺は国立公園に指定されています。
Crater Lake(東側の展望台より)
Day6:ポートランド
01. Visit: Scappoose Clinic
Scappoose Clinicがあるのは、ポートランド市街から自動車で北へ30分程度の距離にある、Old Portlandという町です。通院する外来患者様は1日120人程度で、医師7人体制で診療を行っています。原則予約制で、患者1人あたりの診察時間は30分程度と、日本に比べ診察時間を長く設けていることが伺えました。
Scappoose Clinic
診療所内の診察室
02. Lecture: "Family Medicine"
OHSU FMの前Chairmanであり、Professor Emeritus(名誉教授)のDr. John Saultzによる、家庭医療に関する講義を受けました。Dr. Saultzは、混同しがちな家庭医療関連の用語解説を踏まえ、家庭医療とは何か、またそれがいかに重要な分野であるかを、熱心に説明されました。地域医療に対する情熱と誇りを感じられる、迫力のある講義でした。かかりつけの患者様の診療データから医師のパフォーマンスを数値化し、定期的に各医師へフィードバックする仕組みについての説明があり、これは日本ではあまり見受けられない手法とのことです。
講義風景
Dr.John Saultzとの一枚
03. Dinner with OHSU FM Staffs
今回の研修に携わってくださったOHSU FMスタッフの方々とのディナーにて。
Day7:ポートランド→成田
Back to Japan
今回の企画は当協会として初めての試みでしたが、参加者からは好評をいただきました。米国の地域医療の現場をより多くの方に体験いただけるよう、今後の開催を検討して参ります。