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第18回JADECOM 職員のアメリカ研修記

Thomas Jefferson University にて

JADECOMでは毎年、医師、看護師、コメディカル、事務といったカテゴリ別に、職員向け海外研修を実施しております。これまで各職種計 約100人の職員が、この海外研修プログラムに参加しており、先日もアメリカのフィラデルフィアにあるThomas Jefferson University(以下、「TJU」とする)にて事務職員が研修しました。
ここでは、この研修に参加した職員による研修記をご紹介させていただきます。

(TJU)の画像

Thomas Jefferson University 研修記

(研修者 又川 和樹)の画像

研修者 又川 和樹
所属 地域医療振興協会事務局総務部総務課
研修期間 
2015年9月12日~21日

TJUについて


今回研修したTJUは、アメリカ東部ペンシルバニア州のフィラデルフィア市中心部にある、全米屈指の医療系(医学部・薬学部・看護学部・保健学部を供する)1824年設立の私立大学です。

Thomas Jefferson University

(TJU)の画像

研修目的

私は本研修にて、『魅力ある病院づくり』について学ぶことをテーマとし渡米しました。
私が考える『魅力ある病院』とは、患者様だけでなくそこで働く職員にも愛される病院であり、TJUで学んだことを時系列順に紹介し、JADECOMとTJUの違いについて考察することで、魅力ある病院づくりにおいて何が大切なのか「気付き」を得たいと思いました。

研修2日目

US Health Care and System

アメリカは世界最先端の医療を提供する国だが、医療技術の向上に伴い医療費も高騰しているそうです。日本とは異なりアメリカには皆保険制度がないため、多くの国民は民間の医療保険に加入することで高額な医療費請求に備えています。
‘Being poor is only sick or injured in the U.S.’アメリカではこんな言葉もあるほどです。
政府が提供する「メディケア」(高齢者対象)、「メディケイド」(低所得者)の他、オバマ政権の施策として「オバマケア」が創設され、低所得者も政府の補助を得て保険に加入できるようになりました。しかし、これら政府が提供する保険は医療機関への支払いが少なく、医療機関は更なる経営努力を求められているそうです。

Hospital Management Structure and Function,Inpatient Billing

日本とは異なり、アメリカでは入院した場合の退院時の窓口支払は基本的にはないとこのことで、保険者への請求が完了し給付金額が確定した後に患者様への請求がなされるそうです。ここでは保険者への請求部署、患者様の支払の調整・督促を行う部署、支払が困難な患者のフォローを行う部署といった3部署に分かれています。その中でも特に、請求部署では業務をデータ管理することで、管理職がスタッフの業務の進捗状況を確認することができ、進捗に応じて指示を出すことができます。

(講義の様子)の画像

Inpatient Billing officeでの講義

研修3日目

The Human Capital of Medicine  Career Development Programs for Jefferson employees

TJUでは組織全体の理念・ゴールの共有することを重視しており、職種に関係なく入職後30日間は新人研修プログラムへの参加が義務づけられている。中間管理職向けのプログラムについては任意であるが受講が奨励されており、タイミングが来れば対象者にアナウンスされる。
 TJUの離職率は、日本の医療機関と比して極めて低い(2%)ようであるが、TJUではこれさえも課題として受け止めていたのが印象的でした。

(受講の様子)
The Human Capital of Medicine を受講中

この日午後は、Field Workとしてフィラデルフィアの市街を巡りました。

(映画Rockyのシーンで有名な フィラデルフィア美術館)の画像

映画Rockyのシーンで有名なフィラデルフィア美術館

(美術館からの眺め)の画像

美術館からの眺め

(フィラデルフィア市役所)の画像

フィラデルフィア市役所

(試合の様子)の画像

シチズンズ・バンク・パークでのフィリーズ戦

研修4日目

Jefferson Physician Billing Office(Observation)

TJUに所属する医師が運営するクリニックは、全てTJUのサテライトとして取り扱われており、各クリニックのクラークもTJUの職員であるが、診療報酬の請求作業はこのJefferson Physician Billing Officeで一括して行っており、日本では見受けられない方法かと思われました。  書類については電子化され、請求がスムースにいかないなど、トラブルや課題のあるクリニックにはアドバイザーが相談・訪問し、解決することもあるそうです。TJUには5人程度のアドバイザーがおり、各々が約30クリニックを担当しているとの話でした。

(看板)の画像

Payroll System

米国では2週間毎に給与が支払われるのが一般的で、TJUでは約13,000人の職員に対し、僅か7人だけで給与支払いの事務手続きを行っていたのが驚きでした。職員のタイムカードは各部署でチェックされ、それらのデータがシステム上に集められていました。

Care of the Elderly in the U.S.

認知症患者様のケアは、多くの場合家族が行うが、その家族が心身ともに疲弊してしまうことはアメリカでも社会問題となっていました。また、アメリカは日本に比べ介護福祉についての取り組みが進んでいないようで、施設に高齢者を預けるには費用負担が大きいとのこと。そこで、TJUが行っているプログラムが、‘Skills 2 Care’で、患者が「できない」ことではなく「できる」ことに着眼し、患者が自分でできることを増やし、家族の負担を減らすというもの。理学療法士が自宅を訪問し、生活環境の整備をすることでそのサポートをしています。

研修5日目

Risk Management and Patient Safety

医療過誤による損失はTJUにおいても重要な問題である。クレームの対応はTJU職員が行うが、訴訟に発展した場合は専属の弁護士の対応となる。軽微なものであれば数百ドル程度で済むこともあるが、高額になる例も稀にあるとのこと。「記録していないことはやっていないことと同じ」と言われるほど、実施した医療行為については記録を徹底していました。リスク報告のレポートシステムを導入しており、インシデント発生時には各職員がシステムを通じ報告する。リスクの予防が重要であり、インシデント発生時には対策チームが再発防止策を検討しているそうです。

Emergency Management at TJU

TJUは自主的に災害用品・医療用品を備蓄しており、3マイル離れた地区に倉庫を設けています。倉庫管理の専門スタッフがおり、使用期限が近づいたものは病院に払い出して使用できるよう在庫管理システムが導入され、非常用電源装置(96時間)も設置されております。

Closing Ceremony&Conclusion

5日間に渡る研修の最後にClosing Ceremonyが行われ、この研修のディレクタであるTJU ジャパンセンター長のチャールズA.ポール先生より研修に参加した4人のJADECOM職員までCertificate(修了証)をいただきました。この研修を通じて自己の業務に、是非参考にしたいと思ったのは、部下の業務の進捗状況をデータ化することで上長が常に把握をし、状況に応じて指示を出せるシステムです。仕事が特定の人間に偏ることを防ぎ、個人の負担を軽減するとともに、部署全体の業務を円滑に遂行できるものだと考えました。また、書類の電子化が徹底され、オフィスが広々として使いやすそうであり、これはすぐに実施してみたいと思います。次に、全体的な感想としては13,000人規模の組織であるため当然かもしれないが、各分野で分業が徹底されシステマティックに組織が動いているという印象を受けました。最後に、私が『魅力ある病院づくり』において最も重要だと考えたのは、「教育」という側面でした。TJUでは職員教育に関して多額の投資がなされており、教育の充実によって人材確保に努めると同時に、職員の質を上げることで患者様の満足度を高めることが実現されていることを、この研修を通じて学び取ることが出来たとことは大きな収穫だと感じています。異国の医療機関に実際に触れることが出来たこの5日間は、私にとって貴重な機会となりました。

(集合写真)の画像

ポール先生、スタッフのラディさんと一緒に

TJU研修スケジュール

(タイムテーブル)の画像

バックナンバー

  1. 第32回 第17回 へき地・地域医療学会を開催
  2. 第31回 第16回 へき地・地域医療学会を開催
  3. 第30回 第15回 へき地・地域医療学会を開催
  4. 第29回 第14回 へき地・地域医療学会を開催
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