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管理者から

目標としてのユーフォニアム

 私は、高校時代、ユーフォニアムを吹いていた。チューバと同じような形だがサイズは弟分
のような大きさで吹き手の上半身にちょうどよく収まる感じである。
 このユーフォニアムが好きだった。
 ユーフォニアムという管楽器の立ち位置は多彩で、主旋律を演奏することもあれば、対旋律
を吹くこともある。そしてチューバのように低音のリズムを刻むこともある。どんな役も自然にこ
なすユーティリティープレイヤー。しかも音は心地よくバランスを壊さない。このユーフォニアム
という名前だが、もともとはオイフォニオンと呼ばれていたらしい。この名前はギリシア語の
“euphonos”(eu=良い、phone=響き)に由来する。

 さて地域医療における我が公立黒川病院の立ち位置である。
 まさにユーフォニアムのような多彩な顔を持つ。
 ある時はプライマリケア最前線で漠然とした訴えで受診した方の診断、治療を行う。場合に
よっては、標準的で適切な治療が受けられるように高次な病院に繋ぐ。時には急性期の治療
が終わったのに体力、筋力が戻らない、または後遺症が残った、という方もいて、その方の生
活上の問題解決のためにリハビリテーションを行う。そのリハビリテーションも急性期病棟、包
括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟、さらには外来リハビリテーション、通所リハビリテ
ーション、訪問リハビリテーションも行う。
 受診されたときにはすでにがんの末期であった方には疼痛のコントロールを行い、夜眠れる
ように、食欲が出るように、穏やかに過ごせるように薬の調整も行う。病院だけではなく、在宅
医療も推進し、悪性疾患や肢体不自由な方々が自宅で過ごされることを希望される方にはで
きうる限りの在宅サービスを提供する。
 公立黒川病院はけっして大きい病院ではないが「科」は充実しており、おたがいに垣根低く、
率直に密に相談しながら診療している。
 治療だけではなく、病気の早期発見や予防のために各種健診、人間ドック、予防接種なども
行う。
 そしてこれらを各科の医師が協力するだけでなく、いろいろな職種の方と多職種連携で成
果を出している。多職種ハーモニーである。
我らが公立黒川病院は、決して高次な機能を備えた大病院ではない。特徴をもったクリニック
でもない。しかし患者様のいろいろなニーズに応えるため、持てる能力を使い、あらゆる顔を
使い分ける。
 心地よさを提供しながら、状況に合わせて、いろいろな姿に変化する。そしてそれが近隣の
医療機関ともハーモニーを形成する。
 在宅医療も行う地域医療なら、地域連携なら、多職種連携なら、地域密着リハビリテーショ
ンなら、プライマリケアなら、総合診療なら、各科の垣根の低い病院なら公立黒川病院!と言
われるように日々精進している。

                                    公立黒川病院 管理者 角田 浩