6月27日(土)~28日(日)で “第3回JADECOM総合診療フォーラム” (以下、「フォーラム」とする)を開催しました。
今年で3回目となるフォーラムですが、地域医療や総合診療、家庭医療に関わる医師やレジデント、医療スタッフの方々、そしてそれらを志す多くの医学生が参会されました。
開催名称 第3回JADECOM総合診療フォーラム ~ 地域医療と総合診療医 ~
開催日 平成27年6月27日(土)~6月28日(日)(東京(永田町)にて)
開催内容
1日目:6月27日(土)
(敬称略)
1 日 目 |
1;医学生ワークショップ 「ケーススタディから考える総合診療医」 Learning from patient ~‘ひと’から始まるケーススタディ~ 揖斐郡北西部地域医療センター 副センター長 菅波 祐太 |
---|---|
2;招聘講演 「日本開国:医学教育改革とグローバリゼーション」 Open Nation : Medical Education Changes and Global Standardization ハワイ大学医学部外科教授 町 淳二 |
|
3;教育セッション、オレゴン健康科学大学研修紹介、指導医向けセッション 教育セッション
オレゴン健康科学大学 家庭医療学 准教授 Steven A. Wahls オレゴン健康科学大学 家庭医療学 財務管理者 Benjamin Cox 指導医向けセッション
|
|
4;情報交換会 |
フォーラム1日目は、医学生ワークショップ「ケーススタディから考える総合診療医」 からスタートしました。“CIS”(Chiiki Iryou Student)と呼ばれる地域医療マインドをもった医学生からなるサークルが中心となり、ワークショップ形式でセッションを進行しました。
続いて、ハワイ大学医学部外科教授の町 淳二 氏による「日本開国:医学教育改革とグローバリゼーション」と題した講演が行われました。講演後の町氏にはフロアの医師やレジデント、医学生からの質問が相次ぎました。
フォーラムでは、教育セッションを開催しました。1日目、2日目共に各4題(2日間計8題)、各分野で活躍する指導医から地域医療や総合診療を目指すレジデント及び医学生向けの企画、併せて、オレゴン健康科学大学での研修紹介、指導医向けにも2セッション提供いたしました。
2日目:6月28日(日)
(敬称略)
2 日 目 |
5;教育セッション
|
---|---|
6;JADECOMガイダンス「それぞれの見た地域」 講師・パネリスト: 岐阜大学医学部医学科6年 桐山 俊弥 市立奈良病院 ジュニアレジデント 渡邊 翔 東京ベイ・浦安市川医療センター内科シニアレジデント 小島 俊輔 沖縄県立中部病院附属津堅診療所 次呂久 英太郎 湯沢町保健医療センター 管理者 井上 陽介 総合司会:揖斐郡北西部地域医療センター センター長 横田 修一 |
|
シンポジウム 開会挨拶 地域医療振興協会理事長 吉新 通康 開会にあたって 日本医学会会長、地域医療振興協会会長 髙久 史麿 7;基調講演 「地域医療と家庭医」~地域での研修、その工夫・コツについて~ オレゴン健康科学大学家庭医療学 准教授 Steven A. Wahls 座長 宮崎大学医学部 地域医療・総合診療医学講座教授 吉村 学 通訳 台東区立台東病院総合診療科 玉井 杏奈 8;メインシンポジウム 「地域で総合診療医を育てる」 シンポジスト: 前厚生労働省医政局医事課 課長補佐 松崎 淳人 全国国民健康保険診療施設協議会 会長 青沼 孝徳 社会医療法人財団董仙会 恵寿総合病院 理事長 神野 正博 地域医療機能推進機構 理事長 尾身 茂 座長: 北里大学名誉教授、日本専門医機構理事 吉村 博邦 地域医療振興協会 副理事長 山田 隆司 |
フォーラム2日目は、前日からの教育セッションに続き、「JADECOMガイダンス「それぞれの見た地域」」と題し、揖斐郡北西部地域医療センター センター長 横田 修一 が司会、進行を担当し、地域医療を実践している医師、シニアレジデント、ジュニアレジデントそして医学生が、個々の立場から経験や体験に基づいた地域医療の魅力や豊かさについて発表しました。沖縄県津堅島にある沖縄県立中部病院附属津堅診療所 次呂久 英太郎 氏からは「離島診療所医師というキャリア」という発表があり、医学生の1年次から離島で実習を行っていた体験談や、医師になって離島に赴任し、島で活躍する医師ならでは様々なエピソードが語られました。
午後からのメインシンポジウムでは、冒頭に当協会の理事長 吉新通康、会長 髙久文麿 より開会の挨拶、シンポジウムに先立ち、宮崎大学医学部地域医療・総合診療医学講座教授 吉村 学 氏 を座長とし、オレゴン健康科学大学家庭医療学 准教授 Steven A. Wahls 氏による基調講演「地域医療と家庭医~地域での研修、その工夫・コツについて~」を行いました。ここでは、米国における地域医療現場のトレーニングや地域医療を志す医師への教育方法について紹介されました。
メインシンポジウム「地域で総合診療医を育てる」では、北里大学名誉教授、日本専門医機構理事 吉村 博邦 氏、当協会副理事長 山田 隆司 両氏が座長を務め、シンポジストには、前厚生労働省医政局医事課課長補佐 松崎 淳人 氏、全国国民健康保険診療施設協議会 会長 青沼 孝徳 氏、社会医療法人財団董仙会 恵寿総合病院 理事長 神野 正博 氏、地域医療機能推進機構 理事長 尾身 茂 氏を迎えました。シンポジスト発表の最初に松崎氏より新設される「総合診療専門医」の制度に係わる最近の行政の動向、地域医療との関係について紹介されました。続いて、青沼氏、神野氏、尾身氏そして座長の山田より発表を行いました。
「地域包括ケアシステムの展開には総合診療専門医が必要であり、総合診療専門医の養成には場(地域)が必要である」「総合診療医とは、医療を含む関連する各領域との「つなぎ人」、Advocate、地包括ケアの担い手」「総合診療医の
ニーズ、育成は時代の要請によるもの。国民の皆様の信頼が不可欠である」といった、各氏が所属する施設、団体における地域医療や総合診療医に纏わる側面からの言葉が寄せられ、討論後はフロアの医師や医学生からも質問が続きました。山田からは「総合診療医が国民にも理解、浸透されることが大切である。「医療の窓口」としての総合診療医の役割、患者との信頼関係を築き、その方の生活やHistoryを踏まえ寄り添う医療を提供できる総合診療医が多く育ってほしい」との意見が述べられました。
シンポジストやフロアの内容を含み、会の最後に座長の吉村氏が「これまでの「総合診療」というと様々なイメージで捉えられていた感があるが、これからはしっかりとしたトレーニングを受けた「総合診療専門医」が質の高い診療を提供することにより、国民にも理解され、日本の医療の提供体制が大きく変わることも期待されるところである。若い方々が誇りを持って総合診療医になれるような魅力ある専門医制度となるよう、今後も各シンポジストと共に努めて参りたい。」と結びました。※
2日間に渡ったフォーラムの終了後、参加された 町 淳二 氏にお聞きしました。
今回のフォーラムは「地域医療と総合診療医」というタイトルでしたが、アメリカの卒後研修について教えてください
「ご存知の方も多いことと思いますが、アメリカでは医学教育のシステム化が進んでおり、各科でまずは全レジデントがジェネラルな研修(例えば、総合内科、一般外科など)を受け、それを経てさらに希望者は各専門科の研修(フェロー)に進みます。研修カリキュラムでは、例えば外科であれば5年間の研修期間の中に、地域での研修も含まれており、それらにより地域医療についても理解が深まると思われます。地域での研修を通して、フェローでサブスペシャリティを習得しようとする方々もいます。」
フォーラムに参加されての感想をお聞かせください
「ジェネラルな志向を持った多くの医師や医学生が参加されるフォーラムでの講演は重要な機会であり、とても感謝しております。このような有意義な場が多く設けられることにより、特にレジデントや医学生の中で、地域医療や総合診療医としての志を抱いてくれる方が、より多くなってくれるのではないかと感じました。」
3回目となった今年のJADECOM総合診療フォーラムも盛況のうちに幕を閉じました。地域医療や総合診療の分野で活躍する医師、そしてそれらを目指す若い方々が交わる機会として、今後も開催して参りたいと考えております。