地域医療安全推進センター
 
今月の医療安全通信

医療安全管理者の“戦略的育成” (1)
―人材育成における看護管理者への期待―

 医療安全推進のための政策として医療安全総合対策が実施され、その後、各医療機関においてその配置が促進されたことは、医療安全推進の取り組みの中でも特筆すべきことと考えます。今回は、医療安全推進における近未来を見据えた戦略を立てるにあたって、核となる医療安全管理者の“戦略的育成”について述べます。


【医療安全管理者配置の現状と課題】
 現在、医療安全管理者の配置に関しては、専従または専任・兼任などの配置形態があり、多職種の配置が求められるに至っています。これまで、医療安全管理者として配置される職種は、看護師であることが多いとの報告があり、また、医療安全管理者の複数配置が望ましいものの、実際の配置数は圧倒的に1名が多く、次いで2名が現状と言えます。近年、徐々に医師や薬剤師、臨床検査技師など、他の職種の配置が実施され、多職種の参加によるチームで取り組む医療機関も増えつつあります。
 このように医療安全管理者の配置が促進される中で、“医療安全管理者の任期”に関する課題が挙げられると思われます。「医療安全管理者の任期を何年にするのがいいのか?」という疑問は、医療機関のトップマネジメントにとっても検討課題ではないでしょうか。
 医療安全推進を継続するためには、医療安全管理者の交代や急な退職などに左右されない体制づくりが望まれます。そこで、“医療安全管理者の任期”および配置の望ましい例として、3年で3名の例を考えました。医療安全管理者の交代や急な退職など、ヒューマンファクターに影響されにくい医療安全管理者の育成計画の例として、複数の医療安全管理者をスライド式に、1)業務を習得する育成期間、2)業務を実施し成果を発揮する実践期間、3)後進(次の医療安全管理者)の育成を担う期間、というように1年ごとに役割を変更することで、医療安全管理のレベルの維持・向上が可能になると考えます。これをスライドして、3年の任期で次の医療安全管理者に交代することで、3年後には医療安全管理のレベルを継続することのできる体制が整うことになります。
 また、3名の対応が難しい施設の場合は、2名でのスライドを検討することも可能です。さらに、2名のスライドも困難である場合でも、次の医療安全管理者への交代をスムーズに、医療安全管理の取組みを継続するためにも、せめて数か月の準備期間を検討することが望ましいと考えます。


医療安全管理者の育成計画の例

 もちろん、これは理想的な例ですが、このような体制をつくる利点として、任命された職員が、任期や育成計画が明らかに示されていることで、その役割を受けやすくなるということも考えられます。医療安全管理者の任期を決め、育成環境の整備、および期待される役割を明らかにすることが大切と考えます。これらを広く職員全体に周知し、医療安全管理者としてその役割を担うことを、ひとつのスキルアップのチャンスとして職員が受け入れられる文化を醸成することができれば、組織の“医療安全力”を高めることにも結びつきます。今後、医療安全をさらに推進し、質の高い医療を提供するには、近未来を見据えて自施設の医療安全をどのように推進するのかという“戦略”が必須です。


【人材育成における看護管理者への期待】
 次代の医療安全管理を担う人材育成をどのように計画するかは、施設の医療安全管理に対する理念・方針の影響を受けます。自施設における時代の医療安全管理を担う人材育成を検討する際に、「人材の選任」「選任した当事者の主体性・モチベーションを引き出す」ことが重要となります。特に、「人材の選任」については、医療安全管理者の8割以上が看護職であるという現状を踏まえると、トップマネジメントのなかでも看護管理者のリーダーシップが期待されます。
 また、選任した職員が、医療安全管理者として活動を始めた後に、主体性やモチベーションを持続して取り組むためには、看護管理者の理解と支援が必須です。支援としては、医療安全管理者が業務を遂行するために必要な環境を整えること、実施している内容を認めて後押しすること、看護部門としての協力、などが考えられます。
 是非、近未来を見据えた医療安全管理者の人材育成に、ぜひ看護管理者としてのリーダーシップ発揮を期待します。



(地域医療安全推進センター長 石川雅彦)

本内容は、地域医療安全推進センターのオリジナルですので、無断で掲載・転載することをお断りします。

ページのトップへ